「生前整理をしなきゃ」と思っても、最初に手が止まるのはだいたいここです。
- 何から手をつければいいのか分からない
- 捨てたら後で揉めそうで怖い
- 親(家族)が動かない
- 片付け以前に決めることが多すぎる
私は祖母と伯母、それぞれの生前整理(遺品整理の前段階)に深く関わりました。
同じ家族でも、性格や物・お金の価値観が違うだけで、整理の進み方は驚くほど変わります。
この記事では、捨て方ではなく混乱を減らすための判断の順番を、実体験ベースで整理します。最後にそのまま使えるチェックリストも付けました。
※この記事は、私が祖母・伯母の生前整理に関わった実体験をもとにまとめています。
生前整理の進め方は、健康状態・家族構成・住まい(賃貸/持ち家)・財産や契約の状況によって変わります。迷う点がある場合は、主治医や医療ソーシャルワーカー(MSW)、地域包括支援センター、自治体窓口などに相談しながら進めると安心です。
生前整理で多くの人がつまずく理由
生前整理は片付け作業に見えますが、実際は意思決定の連続です。
- 何を残し、何を手放すか
- いつまでに終えるか
- 誰が決め、誰が動くか
- お金や権利が絡む物をどう扱うか
ここが曖昧なまま「とりあえず捨てる」を始めると、行き違いが起きることがあります。家族構成や財産の状況、思い入れの強さによっても変わるので、心配な場合は「残す基準」だけでも先に共有しておくと安心です。
最初に決めるべき3つ(ここが整理の土台)
① ゴールを決める
施設入所なのか、自宅療養なのか、将来的に家を手放すのか。
ゴールが決まらないと、残す物も決まりません。
② 決める人を決める
- 主導者(段取り・連絡・記録)
- 決裁者(残す/手放すの最終判断)
この2つを分けるだけで混乱は激減します。
③ 期限を決める
入所日、退院予定、体調、明け渡しなど。
期限がないと優先度が下がりやすく、整理が長期化しやすいです。入所日・退院予定・明け渡しなどの“現実の締切”がある場合はもちろん、ない場合でも「今月は棚1段」など小さな期限を置くと進めやすくなります。
捨てる前に必ず救出するもの
まず守るべきはここです。
- 通帳・印鑑・カード・鍵
- 権利書・保険証券・年金関連
- 契約書類
- 現金・貴金属
- 写真・思い出の品
- 親族・業者の連絡先
通帳や権利書などは後から探すと大変なので、捨てる作業に入る前に、まず所在確認と一時保管(救出ボックス)をしておくと安心です。整理は捨てるより先に確保が基本です。
【補足】通帳・印鑑・保険証券・契約書などは、後から必要になっても見つからないと手続きが止まりがちです。
ただし、家族間で管理の認識がずれているとトラブルの火種にもなるため、「誰が預かるか」「どこに保管するか」「何を預かったか(写真やメモ)」までセットで共有しておくと、後の行き違いを減らせます。
権利関係や名義が絡む場面では、状況によって専門家確認が必要なこともあります(例:契約・不動産・相続関連)。
祖母の生前整理が進んだ理由
祖母はがんが見つかり、検査入院と手術を経て、術後の状態が思わしくありませんでした。本人も家族も「自宅で療養できる」と思っていたのですが、年齢が高齢だったこともあり、結果として施設へ行く決断をしました(当時96歳。健康そのもので携帯を操作できるほどの人でした)。
我が家の場合は、結果的に次の3点が整理を進めやすくしたと感じています。
1.ゴールが現実として確定した
「自宅に戻る」という前提が崩れたことで整理の前提が固まりました。
2.任せる相手を明確にした
祖母は頭の回転が良く、「自立して生活することはできない」と感じた途端、私に「自宅の整理をお願いしたい」とはっきり依頼しました。
私の父は数十年前に亡くなっており、伯母がいるにもかかわらず私に頼んだのは、伯母の性格を知っていたからこそだと思います。
(祖母と伯母、2つの自宅整理と施設探しを同時にすることになり)「本当に申し訳ない」と謝られたときは、正直つらかったです。ただ、ここで重要だったのは、祖母が“実務を誰に任せるか”を決めたことでした。主導者が定まり、判断が止まらなくなりました。
3.時間制限が先送りを防いだ
祖母の生前整理をしたのは新型コロナが国内でまん延していた頃でした。話ができたのは検査入院時の待合室と、総合病院外の通院介助の車中だけでした。だからこそ、
- 整理をしたい物を写真で撮り
- 「これはどうする?」と短く確認し
- その場で判断する(「処分する」「祖母が施設へ持っていく」「私の自宅で保管する」のいずれかでした。)
これらのことを積み重ねていきました。
祖母は、私の自宅に移動する物は仏壇だけにして、施設入所後に落ち着いたら伯母と同じ施設へ転居したい、と話していました(それも含めて「まず最低限だけ移す」という判断でした)。
祖母の「決まりやすかった物/決まりにくかった物」
祖母は、手放す判断が驚くほど早い物と、逆に“即決できない物”がはっきりしていました。
すんなり手放すと言ったのは服です。祖母は着物で生活していたので、施設側から「着物でも構いません」と言われていましたが、祖母は「いらない」と。結果的に洋服を身につけてリハビリやデイサービスに通い、短い期間ではありましたが本人なりに楽しんだようです。
服以外も「残す」という発想はほとんどなく、基本的には「捨てていい」と言い切るタイプでした。実際、買い取れるものはほとんどありませんでした。
一方で決まりにくかったのは伯母や父、叔父の学生時代のものです。祖母は「捨てていい」と言うものの、手放す前に「叔父さんのものだけど、こういうのを手放すって婆ちゃん話してるけどどうする?」と親戚(いとこ)たちに写真を見せ、家族の中で話をして決めてほしいと言いました。私は「家族の中で“引き継ぎ先”を作ってから手放す」流れにしました。
そして最後に残ったのが写真です。これは「捨てる/残す」ではなく、データ化して保管するという第三の選択に落ち着きました。
伯母の生前整理が止まった理由
一方で伯母は、同じ「整理」でも進み方がまるで違いました。伯父が亡くなってから10年も経っており、整理はのらりくらり。墓や老後の話が出るたびに感情が先に立ち、そこから整理全体が止まっていました。
私が伯母の介助を始めたきっかけは、義理の弟に「看取りと墓守をお願いする」と伯母が話したところ、「看取りは断る」「墓守はするが(嫁ぎ先の墓に)入らないでほしい」と言われて激怒していたことです。祖母と父は伯母の老後を心配しており(子どもがいない、はっきりしない、責任転嫁が多い——という性格も見えていた)、伯父が残した資産を管理したうえで、アパートや施設を探し、生前整理を進めよう、苗字も戻して(復氏届)父と祖母がいるお墓に入ってもいいよ、という話をしていました。祖母と父の「やりのこしたこと」というか遺言のように思えたのもあり、2人の代わりに私がやり始めたのが最初です。
しかし、止まった要因も3つに整理できます。
1.感情が整理の前面に出てしまった
墓や老後の話が「現実の整理」ではなく、感情の戦いになりやすい状態でした。その結果、生活と整理の話が進まず、周囲が心配して動くほど、伯母は“置いていかれる感覚”を強めていったように見えました。
2.「自分でできる」と言いながら、判断が先送りされた
半年で自宅整理できると言いながら実態は指定したゴミステーションに出すだけ。判断が必要な整理は進まず、さらに私に内緒で祖母宅の鍵を使って祖母の家に荷物を運び出す行為が始まりました。
ここで方針は変わります。伯母に任せ続けると、家の中も家族関係も壊れる。結果的に、伯母の自宅内のものを私が一つ一つ把握し、処分を主導する方向になりました。(ここから祖母と伯母の2軒分の自宅整理がはじまりました。)
3.段取りが崩れ、調整コストが増え続けた(具体例)
段取りが崩れた具体例として、骨董品屋さんとのやり取りがあります。
伯母は華道の師範で「高価な花器がある」と聞かされていたため、私は専門買取業者を複数リサーチしました。しかし、状態や需要の問題で送料の方が高くつくケースが多く、そこで初めて今回は、状態や需要の兼ね合いで値がつきにくい物が多いことから送料の方が高くなるケースもありました。同じ華道用品でも作家物・銘・状態・販路で結果が変わるので、可能なら複数社で見てもらうと判断しやすいです。
どうしていいか分からず、骨董品屋さんに事情をメールで説明すると、「買取はできないが、引き取りなら可能ですよ」と承諾していただけました。ところが当日、何度も説明していたにもかかわらず、伯母が「全部持っていけ」と対象外の物まで押し付ける行動に出てしまい、骨董品屋さんは最後は不機嫌そうに帰ってしまいました。お詫びのメールを入れても返事はありませんでした。
この件で痛感したのは、物そのもの以上に、業者さんとのやり取りでは「対象範囲」や「当日の流れ」を事前にそろえることが、トラブル予防になるという点でした。こちらの段取りが丁寧でも、当日の一言で空気が変わることがあります。
最初に救出したもの(祖母・伯母で共通)
最初に救出したものとして強く残っているのが、祖母・伯母共通で
- 仏壇
- 神棚
です。
神棚は神社へ持って行き、お焚き上げをお願いしました(後に「みんなのお焚きあげ」という選択肢も知り、利用することに)。
宅配で供養できる「みんなのお焚き上げ」を2度利用した話。 | アオゾラパズル
木彫りの大黒さんや巡礼巡りで使用した袈裟などがありましたが、施設へ持ってくことはせずしっかりと供養をしようということで利用したのがきっかけです。
仏壇は“運ぶだけ”では終わらない:費用と工程の実際(実体験)
仏壇の移動は、家具の運搬ではなく「工程管理」でした。私が祖母の仏壇を移動したときは、搬入出代金が32,500円(大手引越センター)でした。この金額の中には、仏壇の滑り止め7,000円も含まれています。新たに設置する場所の揺れ方が把握できなかったため、これは“防災費用”として入れました。
さらに、地域差や宗派によって変わると思いますが僧侶へのお布施は30,000円でした。
※費用や手順は、地域・宗派・菩提寺(または購入店/仏具店)の考え方、依頼内容によって変わります。ここで紹介している金額や流れは、我が家の一例です。
仏壇の移動や供養(閉眼・開眼)について不安がある場合は、先に菩提寺や仏具店に「移動時に必要な作法・手順」と「見積りの考え方」を確認しておくと、当日の段取りが崩れにくくなります。
私が当日仏壇のお引越しをした日の流れはこうです。
- 引越センターが来る1時間前に住職が来て魂抜き(閉眼供養)
- 仏壇搬出 → 私の自宅に搬入
- ここまでで約2時間
- 搬入完了後、菩提寺へ向かい住職を迎えに行く
- 自宅で魂入れ(開眼供養)
- 住職を送り、終了
我が家では、運送手配に加えて、閉眼・開眼の相談や日程調整が必要でした。宗派や菩提寺の考え方、家庭の事情で対応は異なるので、まずは菩提寺(または購入店・仏具店)に「移動時に必要な手続き」を確認しておくと安心です。
このときは新型コロナがまん延し、緊急事態宣言が発令された頃でした。僧侶は通常、多くの檀家さんに囲まれている印象がありますが、当時は一対一で話す時間になり、私にとっても初めての経験でした。
修行時代の話など、普段なら聞けないような話を聞けた一方で、時代背景に翻弄される大変さは僧侶側にもあったのだろうと思います。(この約3か月後、祖母は亡くなり、その際は送り迎えを断り、自家用車でいらしてます。)
生前整理について最初にやることは?
私が行った生前整理は、完璧な分別でも処分でもなく、会話の中で
- 必要なもの
- 処分するもの
をリスト化することでした。
生前整理とはいえ、おおよその年代層は大正末期~昭和20年代の方々だと思います。
かしこまって資料やペンを用意して「あれはどうする?」と話してもなかなか難しいと思います。普段から何気ない会話の中からくみ取っていくことも大切ですし、いきなり難しい判断(高価品・思い出品)から始めるより、まずは取り掛かりやすい場所から小さく進める方が、結果的に続けやすいと感じました。
たとえば、段ボールを数個用意して「必要なもの・不要なもの・ちょっとわからないから保留」と分けて本人にやらせる。
その中で本当に必要なものについては救出ボックスを作る(重要書類・鍵・カード・貴金属など)ことをお勧めします。
- 保留ゾーンを作る(迷う物を一時退避させる場所)
- 最初は分類だけ(捨てる決断を急がない)
- 写真で記録して共有(後から「聞いてない」を防ぐ)
祖母のときは、写真を撮りながら「これは?どうする?」を短く積み重ね、本人の意思を確認しました。伯母のときは、段取りが崩れやすかった分、記録と共有がより重要になりました。
そして、祖母は迷惑をかけないように本人なりに断捨離をしていたようです。私はその気持ちだけでも感謝です。
まとめ:生前整理は「捨てる」より「決める順番」
生前整理で一番大事なのは、捨てる技術ではありません。最初に決めるべきはこの3つです。
- ゴールを決めること(残す/売る予定/手放す)
- 生前整理をするにあたって最後に決める人(主導者と決裁者)
- 期限をしっかり決めて計画をたてること(現実の締切)
そして、捨てる前に救出する。最初の1日は分類と記録に徹する。これだけで、混乱と揉め事はかなり減ります。
台所や衣類など、日常的に触れる場所は手を付けやすく、整理の準備運動にしやすいことが多いです。
次回(第2回)では、実際に私が使った
骨董品屋、産廃業者、福祉バンク、大手リサイクルショップ、地元中古品販売店、遺品整理屋などをどう使い分けたか――
「売る・譲る・捨てる」の出口設計を実録でまとめます。
保存用:生前整理チェックリスト(最初にやること)
A. 最初に決める3つ
- ゴール:残す/売る(予定)/手放す
- 主導者(段取り役)は誰か
- 決裁者(最終判断者)は誰か
- 期限:いつまでに何が必要か(入所・退院・明け渡し等)
B. 先に救出するもの(捨てる前に確保)
- 通帳・印鑑・キャッシュカード
- 権利書・保険証券・年金関連
- 契約書(携帯・保険・NHK等)
- 現金・貴金属・鍵・カード類
- 写真・アルバム(※データ化の選択肢)
- 親族に確認したい思い出品(学生時代の品など)
C. 仏壇・神棚(追加タスク込みで工程化)
- 搬出方法(引っ越し扱い/専門搬出)を確認
- 防災対策(滑り止め等)を検討
- 僧侶(魂抜き・魂入れ)の日程確保
- 引越業者の到着時刻と供養時間を逆算して調整
- お布施目安を把握(例:30,000円)
- 神棚:神社へ持参/お焚き上げ(代替手段も検討)
D. 最初にやること(作業の型)
- 救出ボックスを用意
- 保留ゾーン(迷い物置き場)を作る
- 「残す/手放す/保留」で分類(この日は捨てなくてOK)
- 写真で記録(後から揉める芽を潰す)
- リスト化(会話の中でメモを育てる)
E. 事故防止のためにやってはいけないこと
重要書類などを確認せずに処分しない
- 独断で捨てない(「後から残したかった」が出る)
- 期限なしで始めない(永遠に終わらない)


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