叔父の相続で、私が向き合うことになったのは、15年分の税金の滞納でした。
未納の税金が約208万円。延滞金が約201万円。合わせて、約400万円です。
自宅はすでに差し押さえられていて、正直なところ、相続放棄するしかないのかな……と思いました。でも、方法は残っていました。
そしてもうひとつ。この記事でいちばんお伝えしたいことがあります。
「税金(本税)」と「延滞金」は、別のものだということです。
私は長いあいだ、どちらも同じ「滞納したお金」だと思っていました。市役所の窓口と弁護士さんとで言うことが食い違って聞こえたのも、実はここに理由がありました。
15年放置で約400万円。自宅は差し押さえられていました
叔父の相続で私が最終的に支払うことになった負債は、解体費用を含めて総額1100万円でした。その発覚の経緯や内訳については、前回の記事に詳しく書いています。ここでは繰り返しませんので、よろしければそちらをご覧ください。
今回はその中の、15年分の税金の滞納にあたる約400万円の部分を深掘りします。
公共機関に相談をすれば免除になったものもありました。それをそのまま15年放置した結果、ここまで膨れ上がってしまい、住宅を差し押さえにされてしまい……相続放棄するしかないのかと思ったのですが、方法は残っていた、という話です。
「相談すれば免除になったものもあった」というのは、あとから調べてわかったことです。税金には、払えないときのための制度がいくつも用意されていました。
まず、税金そのものを軽くする制度です。災害にあったときや、貧困のため公私の扶助を受けているときなどは、自治体の条例の定めるところにより、減額または免除されることがあります(市町村民税は地方税法323条、固定資産税は367条、国民健康保険税は717条)。
次に、一度に払えない場合は、申請すれば1年以内の範囲で支払いを待ってもらえます(地方税法15条・徴収猶予といいます)。しかもこの猶予が認められると、その期間に対応する延滞金は免除されます(同15条の9)。
さらに、差し押さえる財産がないときや、取り立てると生活が著しく立ちゆかなくなるときには、自治体が滞納処分の執行を止めることができます。その状態が3年続くと、納税義務そのものが消滅します(同15条の7)。
どれも自治体が個別に判断するもので、条件は市区町村の条例によって変わります。それでも、黙って放置するのと、窓口に相談してみるのとでは、行き着く先がまったく違ってきます。
差し押さえにされた自宅を売却・解体する方法は、未払い税金と税金延滞金を支払うことしか方法がない…? どうなんだろう。と。
法の仕組みを理解しているかいないかで、結果はかなり違ってきます。相続などで多額の税金の未納があったりと、揉めそうな問題を抱えている方。私の経験談からなにか役に立つことがあればなと思って、書いていきます。
「差し押さえ通知」という言葉を知ったのは、以前、身近な人の実家の事業が破綻したときでした。だから今回それを見たときも、「またこの言葉を聞いたな」という感覚でした。
怖い、ドキドキした、というより、「破綻していた」という事実がその一枚に表れていた——私が知らなかった現実が、これだったんだ、と受け止めました。
▼この叔父の相続放棄そのものの経緯は、相続放棄を迫られたあなたへ。解体費用ほか1100万円を払う前にに書いています。
相続人は、故人の税金の滞納も引き継がなければいけないのか
まず、いちばん気になるところから確認していきます。
相続が起きると、相続人は被相続人が納めるべきだった国税を納める義務を引き継ぎます(国税通則法5条)。地方税(固定資産税・住民税・国民健康保険税など)も同様に、相続人が納税義務を承継すると定められています(地方税法9条)。
相続人が複数いる場合は、民法の法定相続分に応じて按分されます。「限定承認」をした場合は、相続財産の限度に限られます。
つまり原則は、税金の滞納も「マイナスの相続財産」として、他の借金と同じように引き継がれる、ということです。
そして、私がこのとき初めて知ったことがありました。
未納の税金(地方税)には延滞金がつくんだ……。借金の利子と同じなんだ、と知りました。
未納が約208万円で、延滞金が約201万円。ほぼ、倍です。放っておいた年数の分だけ、静かに積み上がっていたということでした。
「税金」と「延滞金」、市役所と弁護士で言うことが違う?
ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。
未納の税金と延滞金、正直どちらも同じ「滞納したお金」だと思っていました。
でも市役所の窓口では「未払いの税金と延滞金、どちらを支払うといいですか」と分けて聞かれ、そのニュアンスからは延滞金より税金を先に、という空気を感じました。一方で弁護士さんには「税金は支払わなければならないけれど、延滞金は別」と言われ、最初は「え、何が違うの?」と混乱しました。
どっちの話を信じればいいの??? と、そのときは本当にわからなくなりました。
でもあとから調べてみると、この食い違いには、それぞれちゃんと理由があったようなんです。
滞納者が納めたお金は、まず税金そのもの(本税)に先に充当され、残りが延滞金に充当される決まりがあります。地方税法20条の9の4第2項に「納付し、又は納入した金額は、まずその計算の基礎となる地方税に充てられたものとする」と定められています(国税の場合は国税通則法62条2項が同じ内容です)。
市役所の「税金を先に」という説明は、これを指していたと考えられます。
延滞金には減免の制度があります。徴収の猶予・換価の猶予が認められると、その期間分の延滞金は自動的に半額〜全額が免除され、状況によってはさらに減免されることもあります(地方税法15条の9)。
弁護士さんの「延滞金は別」という発言、また実際に「公共機関に相談したら延滞金が一部免除された実績があった」というのは、この制度の実例と考えられます。
一方で、法律上「地方団体の徴収金」には税金本体と延滞金の両方が含まれ(地方税法1条1項14号)、時効消滅もこの徴収金全体にかかる整理になっています。
そして、時効についても条文がありました。地方税法18条の2第5項では、本税の時効が更新されるときは、その部分の延滞金の時効も連動して更新されると定められています。
さらに同じ条文の第6項に、こう書かれています。「地方税が納付されたときは、その納付された部分の地方税に係る延滞金についての地方税の徴収権の時効は、その納付の時から新たに進行を始める」。
つまり、本税を払い終えたあと、延滞金だけが残り、そこから改めて時効のカウントが始まるという構造が、条文にはっきり書かれているのです。弁護士さんが「延滞金は別」と言っていたのは、こういうことだったのかと、あとになって腑に落ちました。
言うことが食い違って聞こえていたのではなく、市役所は「支払ったお金がどう充てられるか」の話をしていて、弁護士さんは「延滞金は減免されうる」という話をしていた。それぞれ違う角度から、同じものを説明してくれていたのかもしれません。
あのとき私が混乱したのは、「税金滞納」という言葉で、ぜんぶをひとくくりにして考えていたからでした。
「もう時効なのでは?」——NHKの5年ルールから調べ始めた話
15年分、と聞いたとき、頭に浮かんだのは「そんな昔の分まで払うの?」という疑問でした。
時効を意識するようになったきっかけは、税金滞納と同時並行で進めていたNHK受信料の未払いの相談でした。
弁護士さんに「15年分未払いのNHK料金も、時効の5年ルールがあるので、遡っても5年分だけの請求になる(残り10年は時効)」と言われたんです。
そこで「地方税はどうなの?」と気になって質問したのが始まりでした。そもそも延滞金が何なのかも、そのときはまだ理解していませんでした。
※NHK受信料は「時効を主張(援用)してはじめて5年分になる」私法上の債権で、地方税とは時効の性質が異なります。
地方税の徴収権は、原則として法定納期限の翌日から5年間行使しないと時効によって消滅します(地方税法18条)。時効の主張(援用)は不要で、期限が過ぎれば自動的に消滅する公法上のルールです。
ただし、督促状が送られると、その時点で時効はリセットされ、新たに5年のカウントが始まります(地方税法18条の2)。差押えなどが行われた場合も、同じように時効は進行し直します。
実際に市役所の窓口では、時効そのものについては聞きませんでした。聞いたのは「未払いの税金と延滞金、どちらを支払うといいですか」ということだけです。
15年分の内訳を見てわかったのは、差押えの通知が2度来ていたことでした。1度目はどこかの部署に相談したようで、地方税の一部免除を受けながらコツコツ支払っていた実績がありました。ところが新型コロナウイルスのあたりから支払いが滞り、市と県から2度目の差押えを受けていました。
だから私のケースでは、15年分がまるごと請求されていました。これは私の個別の事情によるものなので、「滞納は何年でも有効」と一般化できる話ではありません。
納得はしていません。差し押さえられている以上、税金を払わなければ解除できない。税金と延滞金を払ったあとには、自宅の解体費用も控えていました。親族で分担するにも時間がかかるうえ、金額も高額なので、話しても断られるだろうと思っていました。
前回の記事にも書きましたがその土地自体に、負債総額(1100万円)以上の価値がついていたことを弁護士さんの情報で知ったのですが、親族は話を聞いてくれませんでした。
……書いていて今でも悔しいです。少し対処すれば、それ以上の遺産を手にできたはずなんです。
後日それを知った親族は、私と会うのを避けるようになりました。認めた、ということなんだと思います。
完全に納得したわけではありませんが、こう考えるようにしています。
もし叔父が1度目の差し押さえ通知が来た時点で、誰かに相談していたら、ここまで膨れ上がらなかったはずです。あの当時は叔父の兄弟(私の親世代)もまだ健在でしたし、相談しようと思えばできたはずでした。
差押えを解除して売却するには、結局すべて払うしかなかった
差押えの解除は、原則として滞納している税金・延滞金を完納することが条件です。
ただし、滞納者が誠実に分割納付に応じるなど支払いの意思を示せば、自治体が公売を待ってくれたり、任意売却に応じてくれるケースもあります。
住宅会社、不動産会社にも数社相談しました。差し押さえ通知書の文字でお手上げ……。
そんな中で、ある不動産会社さんからは「解体費用はこちらで持つので、未納の税金と延滞金を払ってもらえませんか」と持ちかけられたこともありました。
親族が相続放棄をすすめてきた事情は前回の記事に書いた通りで、話になりませんでした。
(詳しくは下のリンクからごらんください。)
結局、その不動産会社さんを通してではなく、物件は公売にかけられました。県と市が公売にかけ、最終的には別の不動産会社が競り落として買い取り、宅地として販売していたようです。
▼相続放棄を迫られたあなたへ。解体費用ほか1100万円を払う前に
相続放棄という選択肢と、私が実際にどう向き合ったか
税金の滞納が約400万円もあると聞くと、「もう相続放棄しかないのでは」と思われるかもしれません。私も最初はそう考えました。
相続放棄が認められると、その相続人は「はじめから相続人でなかった」ものとみなされます(民法939条)。滞納税を含めた納税義務も承継しません。相続放棄には「知ったときから3ヶ月以内」の期限があります。
ここが重要です。相続放棄を検討している間に、相続財産の中から滞納税などの債務を支払ってしまうと、「相続財産の処分」とみなされ、法定単純承認(民法921条)が成立して、後から相続放棄ができなくなる可能性があります。滞納税に触れる前に、必ず専門家に確認することが必須です。
前回の記事にも書いた通り、私のケースは資産の方が多く、弁護士さんから「相続放棄しちゃダメだよ」と言われたくらいでした。だから税金滞納が分かった時点でも、放棄しようとは思いませんでした。すでに不動産屋や住宅会社にも相談していて、方法は残っているとわかっていたからです。
ただ、滞納税に触れる前には気をつけました。
「未納の税金を先に払うのか、延滞金を先に払うのか」を市役所にきちんと確認しましたし、明細書もむやみに再発行せず、必要なものだけを手元に置くようにしていました。「払っても大丈夫」だと分かったのは、弁護士さんとのやりとりを経てからです。
税金の未納を放っておくと、こんな金額にまで膨らんでしまう、ということ。相談できる場所があるなら、やはり早めに相談するべきだと思いました。
私は一人で抱え込まず、まず市役所や専門家に確認しました。同じように迷っている方は、確認するところから始めてみてください。窓口で聞くだけなら、お金はかかりません。
叔父のように、どうしたらいいか分からず一人で悩んでいる人が、他にもいるんじゃないか——そう思えば思うほど、私の経験談をブログに書いていくことに価値はあるのかな、と感じています。
よくある質問
Q. 相続すると、故人の税金の滞納も必ず引き継がないといけませんか?
A. 原則として、相続人は故人の税金の滞納(納税義務)を承継します(国税通則法5条・地方税法9条)。ただし相続放棄をすれば承継しません。詳しくは税理士・自治体の窓口にご確認ください。
Q. 滞納した「税金」と「延滞金」は同じものですか?
A. 別のものとして扱われます。納めたお金はまず税金本体に充当され、残りが延滞金に充当される決まりがあります(地方税法20条の9の4第2項)。また延滞金には、徴収の猶予などによる減免制度があります(地方税法15条の9)。時効についても、本税を納付すると、その部分の延滞金の時効はその納付の時から新たに進行を始めると定められています(地方税法18条の2第6項)。個別の状況によって扱いは変わりますので、最終的な確認は自治体・専門家にお願いします。
Q. 税金の滞納には時効があると聞きました。何年前の分まで請求されますか?
A. 地方税の徴収権は原則として法定納期限の翌日から5年で時効消滅するとされていますが、督促や差押えが行われるとその時点で時効はリセット(更新)されます。私のケースでは15年分の請求でしたが、これは私の個別のケースであり、一般的にすべて有効と断定できるものではありません。
Q. 差し押さえられた不動産を売却するには、滞納税を全額払わないといけませんか?
A. 原則として、差押えの解除には滞納している税金・延滞金の完納が必要です。ただし分割納付や任意売却に応じてもらえるケースもあります。個別の状況によるため、自治体・不動産の専門家にご確認ください。
Q. 相続放棄を考えている場合、滞納税を先に払ってしまってもいいですか?
A. 注意が必要です。相続財産の中から滞納税などの債務を支払うと「相続財産の処分」とみなされ、法定単純承認(民法921条)が成立して、後から相続放棄ができなくなる可能性があります。滞納税に触れる前に、必ず専門家にご相談ください。
参考にした一次ソース
- 国税庁「第5条関係 相続による国税の納付義務の承継」(相続人が故人の国税の納付義務を承継すること)
- 船橋市「地方税法第9条、第9条の2」(相続人が地方税の納税義務を承継すること)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(相続放棄の熟慮期間3ヶ月・単純承認/相続放棄/限定承認の3つの選択肢)
- e-Gov法令検索「地方税法」(15条・15条の7・15条の9・18条・18条の2・20条の9の4・323条・367条・717条)
- e-Gov法令検索「国税通則法」(5条・62条2項)
- e-Gov法令検索「民法」(921条・939条)
- アオゾラパズル「相続放棄を迫られたあなたへ。解体費用ほか1100万円を払う前に」(発覚の経緯・金額の内訳・支払総額1100万円)
この記事は私(アオゾラパズル)の体験にもとづく一般的な内容です。私は専門家ではありません。税金の滞納・延滞金・時効・相続放棄の扱いは、税目や個別の事情によって大きく変わります。特に「税金と延滞金の扱いの違い」や時効が成立しているかどうかは個別の判断が必要なため、断定はできません。滞納税に触れる前に、必ず税理士・弁護士・司法書士や自治体の窓口にご確認ください。

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