親が認知症になる前に考えたいお金の備え|口座凍結の不安と家族信託の実体験

家族信託・認知症とお金

先に結論

親が認知症になったからといって、銀行口座が「即凍結」するとは限りません。
ただし、本人の意思確認が難しい状態になると、払戻し等の手続きが進みにくくなることがあります(対応は金融機関・状況で異なります)。


この記事の前提について
・この記事は筆者の実体験をもとにした記録です。
・制度や手続きは個別事情で結論が変わるため、最終確認は取引銀行・専門家・公的機関で行ってください。


「親が認知症になったら、銀行口座が凍結されてお金が下ろせなくなる…?」

そんな噂を聞いて、不安になったことありませんか?物事をしっかりこなしていた親が年を重ねていくにつれて物忘れが多くなったり、動作がゆっくりになったり…。そんな姿を見ると誰でも思いつくことではないでしょうか?

介護費用や施設代、実家の維持費など、今後継続的に続くかもわからない出費。もしも親の預金が動かせなくなったらどうなるんだろう…。かつての私も同じ不安を感じていました。
「もし今、親の預金が動かせなくなったらどうなるんだろう」と。

こんにちは、介護×相続×終活の手続き伴走ブロガー、アオゾラパズルです。

私は契約書作成や新人教育など大手から中小企業などの様々な企業の事務職をこなしてきました。ある程度は「書類のプロ」……と思っていました。…が、家族や身寄りのない親族と連続して介護・相続を経験し、さらに伯母の「実家じまい」に直面したとき、その複雑さに何度も心が折れそうになったことか…。

特に、金銭問題や想定外の病気やケガ、そして一番難題なのがあらゆることに否定的な考えをもってしまう伯母のことを「ネガティブモンスター(通称:ネガモンと勝手に命名)」と心の中であだ名をつけつつ、必死にこれまで行ってきました。精神的にも限界になったこともあります。 そんな私が、伯母と自分の未来を守るために選んだのが「家族信託(民事信託)」という選択でした。

家族信託を検討し始めると、まずぶつかるのが費用の壁です。

「初期費用で50万円以上!?」「手数料11万円払っても不便なの?」

ネットの情報だけでは見えてこない、生々しい現実がそこにはありました。

この記事では、実際に家族信託を運用・管理している私が経験したことを公開したいと思います。

  • 総額50万円超え! 司法書士報酬と信託口座手数料の内訳
  • 事務職の経験を生かして実行! 法定相続情報一覧図を自作して「5万円」浮かせた節約術
  • やってみて分かった! 契約書より大変な「信託口座」運用の落とし穴

「プロに任せるべき安心」と「自分たちでできる節約」。このメリハリを知ることで、あなたの不安は「具体的な準備」へと変わります。

介護・相続・終活は長距離走のようなものです。
私のように無理をして倒れてしまうことがないよう、この記事で全体像を掴んでいただけたらと思います。


第1章:お金への不安が性格を変える?伯母を襲った「ネガティブモンスター」の正体

きっかけは、司法書士さんとの「ふとした雑談」

家族信託を知ったのは、祖母と叔父の相続手続きについて、信頼できる司法書士さんに相談していたときのことでした。

当時、私は年休を使い切り、毎週のように車や新幹線で実家に通い詰めていました。そんな私の疲弊した姿を見ていた司法書士さんが、伯母の施設入所と実家売却の話をした時に

「……実は、『家族信託』という制度があるんですが、伯母様の資産を守るために良いかもしれませんよ」と家族信託という制度があると教えてくれました。

この司法書士さん。私と同じように過去に大きな災害を経験し、人生観が変わるような出来事をきっかけに一念発起して今の仕事に就かれた方。

「今、動かないと後で家族がどれだけ困るか」を自分のことのように親身に話してくれた言葉が、とても説得力があり、自分の今の立場と置き換えてみて伯母の資産も守ることができるのであればひとつの選択肢になるな。と感じました。

伯母にも説明をしてそれでは家族信託口座を作りましょう。となりましたが、いざ始めてみると単なる事務手続きではありませんでした。公正証書を作成してから口座を作る。おぉ、公正証書ですか…。

一つ一つ案件をこなしてその都度伯母に何度も説明をしながら進めました。今思うと早いうちに準備をして良かった。伯母が元気なうちに始めておいて本当に良かった。

なぜなら、完了するまでに「2年」もかかったからです。

「銀行が倒産したらどうしよう」不安のループ

伯母はもともとこだわりが強めな性格で、夫(叔父)を亡くし、子どももいないため、高齢になるにつれそれが「異常なまでの不安」に変わっていきました。

「もし、この銀行が倒産したら、私のお金はどうなるの?」

「このお金は保険でおいておこう」

「あの土地の固定資産税は高い、お金がない(実際はあります)」

その一心で、伯母は預金をあちこちの銀行や郵便局に細かく分散させていました。保険も合わせると、管理している数は両手の指でも足りないほど。

通帳や証書が山のように重なり、本人ですら「何がどこにあるのか」把握しきれていませんでした。なくなった伯父の相続されたといいつつ、未登記だった土地・畑など…。

伯母は私がやるから大丈夫!と話すのですが、口癖のように「どうしよう」というだけ。全く行動に移せない状態のまま月日が経っていました。自宅を売却して施設に移りましょう。という話になった時点でも何一つ解決していませんでした。…これはまとめないといけないな私が。そう思い、伯母に一緒に進めていこうと提案をしました。

介護する側を追い詰める「ネガモン」の言動

私は、施設入所するにあたって土地・畑の整理をしました。そして伯母の資産を「信託口座」と「年金口座」の2つにシンプル化しようと計画しましたが、整理を勧めると伯母はこう言います。

「何かあったときのために分けてるの。不安だからやってるの!」

たくさんの口座を作り分散することが安心だ、と思っていた伯母。年数が経つごとに管理する能力も年齢とともに衰えてきて、残している多数の土地の管理もうまくいかずさらに不安を生む。

「○○したらいいんじゃないのかな。おばちゃん、少し楽になるんじゃない?」と全否定することなくアイディアを会話の中で盛り込んで話してみたものの、全く聞く耳持たずの日々。

その間に施設入所になり、慣れない環境から夜も眠れず、「お金が足りないかもしれない」「施設に通帳は置けない」「草刈りしなきゃならない」など毎日同じ悩みをループしだし、施設の食事や職員さんへもネガティブな言動が……。

不安が不安を呼び、周囲を巻き込んでいくその姿は、まさに「ネガモン(ネガティブモンスター)」

「もういい加減にしておくれ……」喉まで出かかった言葉を私はぐっと飲み込む日々。

(※私はあまりに我慢しすぎて、昨年ストレスが原因で入院してしまいました。皆さんは絶対に溜め込まないでくださいね!…伯母には話してません。なぜってネガモンですからね…。)

「認知症=即凍結」の恐怖と、50万円の決断

補足です(大事):「認知症=即凍結」と一言で言い切ると強すぎるので、ここだけ少し丁寧にします。

実務としては、預金の払出し等は原則として本人の意思確認が前提で、意思確認が難しい状態になると「家族でも手続きが進みにくい/金融機関ごとの判断で対応が変わる」場面が出てきます。

全国銀行協会も、高齢顧客(認知判断能力が低下した方)や代理取引への対応について考え方を整理しており、一律対応ではなく個別事情で異なり得る点に注意が必要です。

全国銀行協会:金融取引の代理等に関する考え方(公式)
全国銀行協会:不測の事態における預金の払出しに関する考え方(公式)

※この記事は私の実体験をベースにしていますが、個別事情(銀行・商品の仕様・本人の状態)で結論が変わるため、最終確認は必ず取引銀行で行ってください。


ある日、「本人の意思確認が難しい状態だと、家族でも払戻し等の手続きが進みにくくなるケースがある」といった事例を知り、強い危機感を持ちました。

家族信託口座を作る前は伯母自身が通帳から現金を引き出して施設に手渡しをしていました。多額の現金を施設内で持ち込むのはもちろん禁止の箇所が多いのですが、伯母はルールを守っておらず部屋に保管していました。

施設へ入所する見受け引受人は私。もし、このまま伯母の所持している多数の口座や土地などそのままの状態で意思確認ができない状態になったら?

…手続きが止まってしまえば、支払いの手配や各種手続きの負担は家族側に集中します。

「感情で戦っても終わらない。法的な『仕組み(型)』で解決するしかない」

何が何でも、家族信託契約書と信託口口座を完成させねば。今かかる費用が高額でも後々の費用や私自身の時間拘束やストレスになる要素が少しでも減るのであれば行動するしかない。

これが、私が「初期費用50万円超えの決断」をした理由です。

(ちなみにこの50万円、のちに信託口座からしっかりと精算させていただきました!伯母のための費用ですからね。 仕組みを知ることは本当に大事だな。と思いました!)


第2章:完了まで2年!家族信託を成功させる「5つのステップ」

早速家族信託を作ろう。書類を集めて、必要事項に記入して、ハンコを押して完成。…というわけにはいきません。

公正証書という公文書を作るのですから司法書士さんの指示に従いながら作業をしていきました。私の場合は完成するまで約2年かかりましたが、すべて司法書士さんにお任せした場合や資産の種類が少ないなど人それぞれかと思います。作成から完成する日数は内容によるということだけは踏まえて以下の流れで進めていきました。

【ステップ1】資産の棚卸しと一本化(期間:約2年)

10以上の口座や保険、土地・畑などを整理。事情があって伯母の苗字を元に戻す「復氏届(ふくうじとどけ)」の手続きも発生し、全ての名義変更が必要になりました…。

今行わなければ相続発生時にとんでもない思いをするのは…親族にいつも押し付けられる私。なので。最初が肝心だと思いました。これまでの経験で必要だった書類も数点重複していたので役立ったことがあります。

その一つに「法定相続情報一覧図」を自作で作りました。遺産分割協議書などでも使用する書式でHPにも載っています。現在であれば生成AIを駆使して一覧図を作る。という方法も。その際は戸籍情報を読み込むことにもなりますので不安な方は「自作する方法」として以下の方法をお勧めします。

アオゾラパズルの知恵:

ここで「法定相続情報一覧図」を自作して活用!

法務局HPからテンプレートをダウンロードし、自分で作成。これ一枚あれば分厚い戸籍の束を持ち歩かずに済むので、窓口作業が劇的に楽になりました。

主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

戸籍謄本を取得してはじめて読み解くのはとても時間がかかると思います。この作業をすることで私自ら家系図をつくってみたこともあります。

【ステップ2】信託の設計とプロへの相談(費用:36万円)

司法書士さんと「誰が、どの資産を、どう管理するか」を決定。契約書の不備は将来のトラブルに直結するため、ここだけは安心を買うためにプロに任せました。

※私の場合は司法書士さんに現在の資産はこれです。と提示して最終目標はこのために使用する。ということを踏まえながら決めていきました。この時点では自宅と土地の売却も済ませて明確になったのでスムーズでした。

【ステップ3】公証役場で「公正証書」にする

公証人の前で内容を確認。信託口口座の開設要件は金融機関によって異なり、公正証書で作成した信託契約書の提示を求められるケースがあります。

※公証役場へ行った話を別投稿しています。

【ステップ4】銀行での「信託口口座」開設(費用:14.3万円)

いよいよ、専用口座を作ります。審査料3.3万+開設手数料11万(!)。

※金融機関によっては口座開設手数料が無料のケースもあるため、事前に確認しておくと安心です。公証役場へ行った後、後日司法書士さんと伯母と一緒に銀行窓口にて信託口口座開設をしましたが、事前準備など計画的に行っていたので当日発行できました。

【ステップ5】運用開始!日々の管理と届出責任

施設代などを支払う「受託者」としての生活が始まります。毎月の出納帳作成や領収書の保管が必要です。

※運用開始後も伯母にその都度説明をして支払や出金をしていたのですが、いまだに公正証書の意味を理解していないところがあるので説明をしています。年々説明をしても翌月に同じことを聞いてきたりするようになりました。私は伯母本人が納得しないのであれば何度も説明をして問題を解決してあげようと思っています。


第3章:総額50万円超え!費用の内訳と「自作」で浮かせた5万円

※注意:家族信託にかかる費用(専門家報酬・公証役場費用・銀行手数料など)は、資産内容や依頼先、金融機関によって大きく変わります。ここでは「私のケースの実額」として公開します。

私のケースで実際にかかったリアルな数字がこちらです。

項目金額(税込)理由・内容(要約)
司法書士報酬360,000円信託設計の整理、契約書作成、公証役場との調整など
信託口口座 事前審査料33,000円銀行の契約内容チェック(私の銀行のケース)
信託口口座 開設事務手数料110,000円専用口座の開設(私の銀行のケース)

合計:503,000円(※公証役場費用や戸籍取得等の実費は別途発生する場合があります)

費用を浮かせた方法2つ

一方で、以下の手続きを自分で行い、合計で約5万円ほどコストを浮かせました。

  1. 法定相続情報一覧図の自作(節約額:約1.5万〜5万円)法務局のテンプレートを活用。戸籍を読み解くのは大変でしたが、完成した時は達成感がありました。戸籍の見方が理解できたのでこれがきっかけで家系図作りにも目覚めました!
  2. 印鑑証明書等のコンビニ発行(マイナンバーカード活用)窓口(300円〜)より安くなる自治体もあり、何より「待ち時間ゼロ」が最大の節約でした。

第4章:手数料11万円でも「ネット不可」!? 信託口口座の厳しい現実

★前提:信託口口座の開設要件・使えるサービス(ネットバンキング可否、ATM、通帳、手数料など)は金融機関ごとに異なります。ここから先は「私のケース+一般的に注意すべき点」として読んでください。

参考として、三井住友信託銀行の公式案内では、信託契約の事前確認や、公正証書による信託契約に限定する旨などが明記されています(要件の一例)。


実際に私が開設した「民事信託専用口座(某地方銀行のケース)」の仕様は、驚くほど制限がありました。

  • インターネットバンキング:利用不可
  • ATM取引:制限あり(基本は窓口。遠方の場合は振込手数料で割り切る!)
  • 利息:なし(決済用預金に該当する場合、預金保険制度により全額保護の対象。※どの商品が該当するかは金融機関により異なるため要確認)

★根拠メモ:

・金融庁:預金保険制度(決済用預金は全額保護)
https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/                          ・預金保険機構:保護の範囲(決済用預金の3要件)
https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000016.html

受託者向け:変更が出たら“早めに銀行へ確認”チェックリスト

※取扱いは金融機関・契約内容で異なります。まずは取引店へ相談してください。

  • 受託者の住所・氏名が変わった
  • 受託者の判断能力に関して手続きが必要になった(例:後見等の申立てを検討している)
  • 受益者が亡くなった(相続が発生した)
  • 信託契約の変更・終了を検討している

参考(法令):受託者の分別管理義務は、信託法(第34条)に規定があります。

信託法第34条 受託者の分別管理義務

受託者は、信託財産を自分の財産とは分けて管理する義務があります(信託法34条)。
そのため、実務では信託専用口座を作って分けて管理する形が取られることが多いです。

家族信託を検討する前に銀行へ確認しておきたいこと3つ

本人確認が難しくなった場合の払戻し対応

家族信託口座の開設可否

手数料

まとめ:家族信託の50万円は「高い」か「安い」か?

今回の私のケースでは、家族信託によって

施設費用や医療費の支払いを安定して管理できるようになった
・伯母の不安が少し減った
・私自身の手続きの見通しが立った

という変化がありました。

ただし、家族信託はすべての家庭に必ず必要な制度とは限りません。
資産の内容や家族関係によっては、成年後見制度など別の方法が向いているケースもあります。

そのため、制度の選択は
取引銀行
・専門家
・公的機関

に確認しながら、自分の家庭に合った方法を検討することが大切だと感じています。

参考文献(一次ソース)

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