「タダでやれ」と言われた家族信託の受託者が、報酬をもらうまで

家族信託・認知症とお金


30秒まとめ

  • 家族信託の受託者は、契約に定めがあれば報酬を受け取れます(信託法54条)。定めがなければ原則無報酬=「タダでやる」が法律の初期設定です。
  • 通院付き添いや役所の手続きは信託とは別の仕事。これも委任契約で報酬を決めれば、堂々ともらえます(民法648条)。
  • 私は月額制の「生活支援の委任契約」を作り、労力への対価と実費(ガソリン代など)を分けて決めました。
  • 家族からもらう報酬は税金の対象になる場合があります。金額の決め方と合わせて、専門家への確認が安心です。

家族信託の管理も介護も、家族だからタダで当然。そう言われて、モヤモヤしていませんか。

私は伯母の家族信託口座を無償で管理しながら、通院の付き添いも、役所や保険の手続きも引き受けていました。ところが「報酬を払っているんだから」と、頼みごとはだんだん強くなっていって…。

納得できなかった私は、「生活支援の委任契約」を作って、報酬をもらう形にしました。この記事では、その経緯と、契約に入れた項目を体験から書きます。

①「全部タダでやれ」と言われた日のこと

家族信託口座を作成したとき、公正証書に記載していたのは「無償で家族信託口座を管理する」という文言でした。

本来はこの形で伯母の資産管理をしてあげたら、叔父から金銭の無心をされて伯母の生活ができなくなる、ということを回避できるよね。ということで、伯母も同意して作成しました。

そのころは複数の通帳をまとめたり保険を解約したり、父と祖父母の墓に入りたい場合のために苗字を戻したり(復氏届だしたり)、マイナンバーカードの氏名変更などの業務を並行していました。。

📌 補足(事実):家族信託の口座(信託口口座)と、年金の振込口座は、一つにまとめられません。年金は受け取る権利が本人だけのもの(一身専属)で、本人名義の口座にしか振り込めないためです。だから「年金口座=伯母が自由に使う/施設費・医療費=信託口座で管理」と分けるのは、制度的に理にかなった形です。(出典:日本年金機構「受取機関の変更」

ここからエスカレートしてきて、あまりにも度が過ぎたこと。そして、これまでの祖母の介護での仕事の休み方や評価などで部署異動を言われ、最終的に退職することになったこと。それならば報酬をもらって業務をこなし、すべての業務が終わったらこの報酬も終了して、家族信託口座の管理のみにしよう。と、「生活支援の委託書」「死後事務手続きの委託書」を作りました。

最終目標は、伯母が遺言書をかくこと、永代供養先を見つけること、葬儀会社を決めること。そしてこれらの費用を家族信託口座から生前のうちに支払いを済ませて、伯母の施設費用と医療費の管理をする。という目標を立てました。

家族信託口座と年金振込口座は一つにはできないルールになっていますので、年金振込専用口座は伯母が自由につかっていいよ。これからの老後にあててね。という口座。施設費用と医療費の支払いは家族信託口座で管理するよ。というシンプルなものにしたのですが…。

介護関連のプロの方や様々な方に「無償だったの???」と驚かれました。
私としては長期にわたるものではなかったし、事務処理は本業というか、仕事で他の相続があった時もこなしていたから、その延長で行ったんですね。

ところが伯母は、「報酬を払っているんだから」と、頼みごとがだんだん強くなっていって。
正直、怖さがありました。
まわりにも「お金を払っているのにやってくれない」という言い方が伝わってきて…
(…教えてくれた方には感謝しているけど、正直、耳には入れたくなかったです。正直な話。)

期限も、去年の12月で決めるという約束だったのに、話を逸らしたり、声を荒げてその場をしのごうとする。
…あれ?これは、私が思っていた関係じゃないぞ。
ここで私は目が覚めました。

今年中に完了しなかったら、次の方法を考えると。

家族信託の管理も介護も、家族、親族であれ、ルール決めが必要ですね。
私のように仕事もなくしてしまったわけで。

伯母は祖母の介護も看取りも断った人なので、私が代わりに行ったという過去があります…。

いろいろな問題が起きるたびに私は調べたり聞いたりしていますが、法律も変わったりと、介護も相続も変わっています。

昭和一桁の親を持つ子は、「面倒を見なければならない」という親の代の頃の姿を見てしまっているので、思い込みというか「そのように思い込ませられている」風潮アリだと思います。

私は一時的に祖母、母、伯母の3人を一挙に見ていた時期があり、その反動ではないですが、免疫が落ちて去年、入院・手術をしています。

ベッドの上で
「こりゃいかん!私、介護するために生まれたんじゃない」
あれもしたいこれもしたい、今元気じゃなかったら、あと30年、40年生きるとしたら体がもたないし、好きなこと後回しにしてたけど間に合わないじゃない!!!

ブログを開設した理由もその一つで、私の経験が役に立つのであれば発信したい。
あと一番なのが「私のように犠牲をはらってまでする必要はないよ」ということ。

② 家族信託の受託者って、そもそも報酬をもらえるの?

ここで事実の整理

  • 家族信託の受託者は、信託契約に「報酬を受ける」という定めがあれば、信託財産から報酬(信託報酬)を受け取れます(信託法54条)。
  • 逆に、契約に定めがなければ原則無報酬。「タダでやる」が法律の初期設定になっています。
  • つまり「もらえない」のではなく、「決めていないから、もらえていない」だけです。

家族信託の報酬は無償で、と取り交わしました…というよりは、伯母は「いらないでしょ?」と発言をして、目の前にいた司法書士が目を丸くしたのが印象的でしたね…。

伯母にとっては、人に動いてもらうことへの「対価」という感覚が、あまりピンとこなかったみたいです。
ただ「高い」と。
……この“感覚のズレ”こそ、口約束じゃなくて、契約にしておくべき理由なんだと思います。

③ 信託の“外”の仕事は、もっとタダ働きだった

ここで事実の整理

  • 通院の付き添い・買い物・役所や保険の手続きは、家族信託(財産の管理)とは別の仕事です。
  • こうした事務を人に頼む契約(委任・準委任)は、報酬の特約がなければ無報酬が民法のルールです(民法648条)。
  • これも裏を返せば、「契約で報酬を決めれば、堂々ともらえる」ということです。

実際にどれだけあったか。書き出してみます。

通帳をまとめる(とりかかってから1年以上)

ゆうちょ銀行・地方銀行など数か所を廻って、解約手続き。窓口で説明しても、なかなか行員さんは進めてくれない印象でした。姪の立場で同伴していること、伯母が施設に入所していること……「認知能力が落ちたの?だから解約するの?」という目で見られた可能性はゼロではないと思います。その時点ではまだ家族信託口座を作成中だったので、なおさらだったかもしれません。

保険の解約(約1年・毎週金曜2時間)

大手生命保険会社が数社。保険証券には解約の連絡先が書いていないので、かなり検索しました(このころはAIはまだなかったので…今だったら楽だったかも)。直接電話をすると引き止めの営業がすごいと聞いたこともあり、慎重に進めました。

伯父が亡くなったあとの保険まわりも手つかずで残っていて、伯母は「関わりたくない、嫌だ」と拒絶していたので、私が代わりに進めました。

「姪の私が伯母の保険解約について聞きたいのですが…」と丁重に電話しても、あたりは強かったです。「なんで本人から来ないんですか!あなたの立場は?」という感じで…。当時は詐欺まがいの事件や保険外交員の横領などがあった年だったので、厳しめに対応していたのかもしれません(…ということにしておこう。と。)

保険解約と銀行窓口のやり取りで、毎週金曜日に2時間ほど。プラス、伯母に何度も何度も説明をしたので、かなりの労力でした。その場では「わかった」となるのに、あとから「保険の解約がおかしい」と言われたことも…(困)

復氏届(苗字を戻す)

これはいくつかの理由がありました。

  1. 父と祖父母の墓に入る、という選択肢を作ること
  2. 亡くなった配偶者側の親族と、戸籍の上でも一区切りつけること
  3. 私自身の手続きが楽になること(同じ苗字であること。祖母の時も大変でしたので)
  4. 自宅整理と仏壇・墓守を義理の弟さんに任せた、というけじめ
  5. 相続のときに動きやすくすること

復氏届を出すか、姻族関係終了届を出すか。。。は、司法書士さんと相談して決めました(AIも検索も今ほどない時代です)。伯母が「戸籍を見られるのは嫌だ」と強く望んだので、新しく本籍を作る形にしました。

これも私一人で役所へ。お昼休みの、利用者が少なそうな時間帯に、カクカクしかじか…と説明して、代理で記入して提出してきました。

マイナンバーカードの氏名変更

本籍を変えた際に、一緒に行いました。

通院の付き添い

2年前は眼科・歯科・整形外科・循環器内科と、1か月に3、4度付き添いをしたことも。現在は1か月に1度になるように調整しています。本人曰く、毎週だと疲れる。午前中は嫌だとのこと。。。

自家用車を出す

乗合タクシーや施設の車を利用する方法もあるのですが、通院の後に買い物や外食もできるから、と自家用車を出すようにしました。自宅から施設、病院などを往復して、約120キロあります。これは来年度、私は廃止にする予定です。

アポ取り

「自分で話せない、何を言っているのかわからないと言われたから嫌だ」となり、代理で行うように(…何でもかんでも嫌だ、なんですよ)。現在は病院や包括支援センターもweb対応が増えたので、電話のやり取りは減りました。

資料まとめ

ここ2、3年で変わりました。AIを使って、施設職員や包括、病院に提示しても問題ないものを作れるようになったので、楽になりました。感情論で記録を残しても、従事者側から見ればポイントが違うと思ったので。この記録は、何度か作り替えています。

この「信託とは別の事務」を報酬の対象にした——というのが、次の章につながります。

④ 私が作った「生活支援の委任契約」——何を、どう決めたか

資料や本を読み、AIと最新の一次ソースをもとに報酬を割り出しました。伯母の施設にある有料サービスと、全国の施設などでおこなっているサービスの平均を割り出し、伯母にみせて了承を得ました(…なのに文句を言う。。。)。

私が作った書類は、実は1枚ではなく「3点セット」でした。

1. 家族信託の契約(公正証書)

信託口座の管理そのもの。ここには最初から「受託者は無報酬とする」という一文が入っています。つまり信託の管理はタダ。これは今も変わっていません。(公正証書を作ったときの体験はこちら

2. 委任契約書(生活・医療支援)——今回の主役

信託の“外”の仕事に、初めて報酬を決めた契約です。入れた項目:

  • 業務の範囲(できるだけ具体的に書き出しました):通院の予約・同行・説明支援/薬の管理と服薬記録/病院・施設との連絡調整/検査予約やセカンドオピニオンの支援/保険・年金・行政手続きの同行・代行/買い物や衣類の準備/施設生活の補助(持参物の管理など)/手術のときの説明支援・同意確認の介助
  • 報酬:月額制でひとつの額に。(決め方はすぐ上の段落のとおり)
  • 実費の精算:報酬とは別に、ガソリン代(上限つき)・車の維持費・通信費・郵送代などは、立て替えて信託口座から精算する、と分けました。労力への対価と実費を混ぜないのがポイントです。
  • 期間と変更:いつ始まり、どうなったら終わるか。内容は話し合いで変えられること。
  • そして大事な一文——「この報酬は信託報酬には該当しない」。信託の仕事(無償)と、生活支援の仕事(有償)を、契約の文面ではっきり分けました。

3. 死後事務委任契約書

死亡届・火葬・葬儀・永代供養・行政や施設への連絡・年金や施設の解約など、亡くなった後の手続きの委任。費用は生前に支払うか、信託財産から出すことに同意をもらう形です。

📌 お金の注意:家族からもらう報酬は、受け取る側の所得(税金の対象)になる場合があります。金額や形によって扱いが変わるため、税理士か税務署への確認が安心です。なお「扶養義務者からの通常の生活費」に贈与税がかからない話(国税庁タックスアンサー No.4405)は、これとは別の話です。

確定申告しました。

契約書を家族だけで作るのが不安な人は、行政書士・司法書士に頼む手もあります(行政書士と司法書士、どちらに頼む?の話はこちら)。費用が気になる方は、家族信託にかかった費用の記事も参考にしてください。私はこうして形にできましたが、合わない家庭もあると思います。

⑤「お金の話を家族とする」ことについて

その時、伯母は淡々と目を通して質問をしてきたので、答えました。
「お金を渡すんだから、なんでもしてくれる」という感覚が先行していたようです…。

私の場合は、家族信託口座は無償だけど、介護通院や自家用車を出すこと、アポ取り、資料まとめ、など事務作業を代理していることについての報酬を明確にしたことが大きいです。

ここから委任契約、死後事務手続き契約、介護や通院などの記録、伯母の意思確認としての「意思確認ノート」と、4種類の書類を作るきっかけになりました。
これら4つは読者の役に立つと思うので、アップしたいと思っています。

これを機に、伯母との記録を2年以上書き留めています。自分がどこまでしたか、問題があった時は過去の資料があるので指摘できるし、一番は私自身を守ってくれるもの。だと。

⑥「家族だからタダで当然」に悩むあなたへ

家族ほど、親族ほど、境界線をしっかり引いて決めることが大事。
私のようにすべてを犠牲にする介護や相続、終活はダメ!

この記事のまとめ

  • 「タダでやる」が法律の初期設定。でも、決めれば変えられる(信託法54条・民法648条)
  • 報酬を決めるのは、がめついことではなく、続けるための仕組み
  • お金(税金)の扱いは、税理士・税務署に確認を
  • 一人で抱えず、契約書は行政書士・司法書士に頼っていい


よくある質問(FAQ)

私が実際に「これ、どうなんだろう?」とつまずいた点を、調べた範囲でまとめました。最終的なご判断は、専門の窓口にご確認ください。

Q. 家族信託の受託者は報酬をもらえますか?

信託契約に報酬の定めがあれば受け取れます。定めがなければ原則無報酬です(信託法54条)。

Q. あとから報酬を決めることはできますか?

信託契約の変更が必要になる場合があります。方法は司法書士・弁護士にご確認ください。

Q. 介護や付き添いの報酬も家族信託からもらえますか?

介護・生活支援は信託(財産管理)とは別の仕事です。別途、委任契約などで報酬を決める方法があります。私はこの形にしました。

Q. 家族からもらう報酬に税金はかかりますか?

受け取る側の所得になる場合があります。金額や形で扱いが変わるため、税理士・税務署にご確認ください。私は確定申告をしました。


この記事で参考にした公的な情報源(一次ソース)

「相談する前に、自分でも確かめておきたい」という方へ。本文で触れた制度は、次のページでご確認いただけます。

※リンク先はいずれも公的機関・公的団体のページです(2026年7月時点)。制度は改正されることがあるので、最新の内容は各ページでご確認ください。


※この記事は私(アオゾラパズル)の体験にもとづく、一般的な内容です。私は専門家ではありません。契約や税金の扱いは、ご家庭の状況によって変わります。最終的なご判断は、司法書士・行政書士・税理士など、専門の窓口にご確認ください。

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