この記事でわかること
- 2026年1月施行の改正行政書士法で、終活の「一括おまかせ業者」に何が起きたか
- 行政書士と司法書士、終活の場面でどちらに何を頼むべきかの整理
- 死後事務委任契約でできること・できないことの明確な線引き
- 伯母との実際の話し合いで気づいた「決めるのは本人だけ」という現実
「終活は大事だとわかっている。でも、何をどこに頼めばいいのかわからない」——そう感じている方ほど、「全部おまかせ」を謳う民間業者の言葉に引き寄せられやすいかもしれません。
2026年1月、改正行政書士法が施行されました。無資格者による有償の書類作成は改正前から違法でしたが、この改正により「会費」「手数料」「コンサルタント料」など名目を問わず規制対象となることが明文化され、法人への両罰規定も強化されました。知らないまま契約すれば、手続きが無効になるだけでなく、費用を払った相手が法的責任を問われる事態にもなりかねません。他人事ではないかもしれません。
わからないことばかりで疲弊しながら検索している方に向けて、経験した者として同じ目線で書いています。難しい話を簡単にするつもりはありません。ただ、知っていれば防げることを、知らないまま通り過ぎてほしくないと思っています。
専門家につなげなかった後悔が、私の原点にあります
私が法律や制度を「自分ごと」として調べ続けるようになったのは、20代のころのある経験がきっかけです。行政書士という職業を知り、独学で参考書を開いた時期もありました。資格取得には至りませんでしたが、「正しい知識を持つことの大切さ」は、そのとき身体に刻まれました。

20代のころ、身近な人が追い詰められていく場面に立ち会ったことがあります。何もしてあげられませんでした。正確に言うと、「正しい専門家につなぐ」という選択肢を、そのとき私は知らなかったのです。専門家がいれば、少なくとも騙されることはなかったかもしれません。その後悔が、法律や制度を「他人事にしない」原点になっています。
法律を知らないまま動いて損をする方、悪質な業者に言いくるめられる方——そういう場面を、その後も繰り返し近くで見てきました。終活の世界も例外ではないかもしれません。
記事を書く動機として、終活というテーマそのものより、「規則を知らずに損をしたり騙されたりするのを防ぎたい」という気持ちが先にあります。最低限の知識があれば回避できることが、あまりにも多いと感じています。この記事はそのために書いています。
2026年1月施行「改正行政書士法」で何が変わったか
無資格者が書類を作ると何が起きるか
改正行政書士法第19条は、「行政書士でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを
問わず報酬を得て官公署への提出書類その他権利義務・事実証明に関する書類を作成することを
業とすることができない」と定めています。
つまり、「親切な代行屋さん」だと思っていた業者が、法律の目で見れば「無免許のドライバー」になってしまった——そんなイメージかもしれません。終活の場面でこれに該当するのは、死亡届・年金停止手続き・各種解約書類の代理作成などです。
報酬の名目を「会費」「手数料」と言い換えることで違法性が曖昧になっていた慣行に対し、2026年の改正で「いかなる名目によるかを問わず」という文言が第19条に明記され、抜け穴が塞がれました。無資格者が有償でこれらの書類を作成すれば違法となり、契約自体が無効になるリスクも生じます。「格安の一括パッケージ」を選んだ結果、手続きがやり直しになった——そういう事態が今後増える可能性があります。知らなかったでは済まされないかもしれません。
終活の場面で法律が絡む主な書類
以下は行政書士でなければ有償で代行できない書類の代表例です。「うちは全部やります」という業者がいたら、この点を必ず確認してみてください。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ⚠️ 要確認 | 死亡届・死亡診断書の手続き補助 |
| ⚠️ 要確認 | 年金停止・未支給年金請求書類の作成 |
| ⚠️ 要確認 | 各種解約・名義変更に必要な書類の代理作成 |
| ✅ 民間可 | 葬儀・納骨・遺品整理の手配(事務的な調整) |
| ✅ 民間可 | SNS・サブスクリプションの解約連絡 |
| ✅ 民間可 | 医療費・公共料金などの清算手続き |
「士業迷子」を抜け出す。行政書士と司法書士、頼む場面はここが違います
「専門家に頼もう」と思っても、行政書士と司法書士の違いがわからない——それは当然かもしれません。名前も仕事も似ていて、終活の場面では両方が登場することもあります。
経験から言えること
正直、私も最初は「どっちでもいいじゃない」と思っていました。でも実際に手続きの中で動いてみると、この二つの「一線の重み」がよくわかりました。担当できる業務には明確な線引きがあります。この整理を持っておくだけで、「誰に何を頼めばいいか」という迷いは消えるかもしれません。
業務範囲の比較
| 業務内容 | 行政書士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 遺言書の文案作成サポート | ○ | ○ |
| 遺産分割協議書(争いがない場合) | ○ | ○ |
| 死後事務委任契約の受任 | ○ | ○ |
| 官公署への提出書類作成全般 | ○ | — |
| 年金停止・火葬許可等の届け出 | ○ | — |
| 自動車の名義変更 | ○ | — |
| 不動産の相続登記(2024年義務化) | — | ○ |
| 裁判所へ提出する書類の作成 | — | ○ |
場面別、どちらに頼むか
- 不動産がある相続:相続登記が必要になります。司法書士への依頼が必須です。2024年から義務化されています。
- 役所の手続きが多い:年金停止・火葬許可・各種届け出など。行政書士が代理で書類を作成・提出できます。
- 両方が必要な場合:行政書士と司法書士が提携している、または紹介し合える関係の専門家を選んでみてください。
司法書士にしかできないこと
司法書士にしかできない作業——その代表が不動産登記です。それ以外の「役所への書類を作る・集める・代わりに動く」という部分は、行政書士が担えます。「どちらに頼めばいいかわからない」という状態のまま、まとめて安い業者に流れてしまう——その入り口にいる方に、この整理が届いてほしいと思っています。
※ 争いのある相続(遺産分割調停・審判)は弁護士の領域になります。
死後事務委任契約でできること・できないこと
死後事務委任契約は、「自分が亡くなった後の事務手続きを、信頼できる人や専門家に任せる」ための契約です。ただし、何でも任せられるわけではありません。法律上の限界を知らずに「全部お願いします」と契約すると、いざというときに動けない部分が出てくるかもしれません。契約書は、万能ではないのです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ✅ できます | 葬儀・納骨・永代供養・遺品整理の手配 |
| ✅ できます | SNS・サブスクリプション等の解約連絡 |
| ✅ できます | 医療費・公共料金等の清算 |
| ✅ できます | 関係者への死亡通知・各種挨拶 |
| ❌ できません | 遺産分割など相続に関わる法律行為(弁護士・司法書士の領域) |
| ❌ できません | 死亡届等の書類の無資格者による有償作成(行政書士の領域) |
| ❌ できません | 公正証書遺言の作成・認証 |
伯母との話し合いから
子どもがなく、夫に先立たれた伯母と、この契約について実際に話し合っています。「亡くなったあとのことは、葬儀・納骨・永代供養を事前に自分で決めてくれれば、この契約書を基に粛々と進めるから大丈夫。他の親族が何を言っても、これに沿って動くよ」と伝えました。
ただし、伯母は「あなたが決めて」と言ってきます。私は絶対にそれをしません。私が代わりに決めてしまったら、契約書の意味がなくなるからです。自分の葬儀・納骨・永代供養をどうしたいか——それを決めるのは本人だけです。専門家に任せられるのは「決めたことを実行すること」であって、「何を決めるか」ではないのです。
世代別 終活チェックリスト 2026
終活は「死の準備」ではありません。「残された人が困らないための整理」です。全世代に共通するゴールはひとつですが、取り組むべき課題は世代によって異なります。家族全員で読んで、それぞれの場所から動き始めてみてください。
20〜30代:より良く生きるための棚卸し
- デジタル遺品リストの作成
- サブスク・契約の一覧化
- 緊急連絡先リストの整備
- エンディングノート入門
40〜60代:実務課題と専門家選定
- 実家の片付け・相続の把握
- 信頼できる行政書士の選定
- 死後事務委任契約の検討
- 士業の役割分担を知る
70代以上:想いの継承・人生の完結
- 遺言書・公正証書の整備
- 医療・介護方針の文書化
- 家族への想いを言葉にする
- 具体的な対話を重ねる
信頼できる専門家の選び方 ── 3つの確認ポイント
行政書士は国家資格者です。日本行政書士会連合会のウェブサイトから資格確認・紹介を受けることができます。良質な専門家には共通点があります。
- 資格番号を提示できるか。行政書士は必ず資格番号を持っています。開示を断る業者や「監修」と言葉を濁す相手は信頼しないほうがよいかもしれません。
- 業務範囲外を他の専門家に紹介できるか。行政書士が「何でもできます」と言ったら注意が必要です。司法書士や弁護士と連携しているかを確認してみてください。
- 家族への説明を促してくれるか。良質な専門家は、家族全員が理解した状態での契約を望みます。急かしてくる相手とは距離を置いてみてください。
よくある質問
Q. 終活の「一括おまかせパッケージ」は違法になるのですか?
A. パッケージの内容によります。葬儀手配や遺品整理の調整は民間業者でも行えますが、死亡届・年金停止・解約書類などの「書類作成」を有償で行うには行政書士資格が必要です。2026年1月施行の改正行政書士法により、無資格者による有償の書類作成業務は明確に禁止されました。契約前に「書類作成は誰が行うか」を必ず確認してみてください。
Q. 行政書士と司法書士、終活ではどちらに頼めばよいですか?
A. 不動産の相続登記が必要なら司法書士、役所への届け出や書類作成が必要なら行政書士が適任です。両方が必要な場合は、互いに提携・紹介できる専門家を選ぶと手続き全体がスムーズになるかもしれません。争いのある相続は弁護士の領域になります。
Q. 死後事務委任契約は、遺言書の代わりになりますか?
A. なりません。死後事務委任契約は「亡くなった後の事務手続きを誰かに任せる」ための契約であり、財産の分配や相続に関する指定はできません。財産の行き先を決めるには遺言書(できれば公正証書遺言)が必要です。両方を組み合わせて使うのが一般的です。
Q. 子どもがいない・配偶者に先立たれた「おひとりさま」は、何から始めればよいですか?
A. まず「自分が亡くなった後に誰に何をしてほしいか」を書き出すことから始めてみてください。葬儀・納骨・永代供養の希望を具体的にしておくことで、死後事務委任契約の中身が決まります。その上で行政書士に相談すると、必要な手続きの全体像が見えてくるかもしれません。
Q. 家族が「終活の話をしたくない」と言います。どうすればいいですか?
A. 「死の準備」として切り出すと拒否反応が出やすい傾向があります。「残された家族が困らないための整理」という切り口で話すと受け入れられやすくなるかもしれません。世代別チェックリストを入り口にして、自分の世代の項目から始めるのも一つの方法です。
まとめ
「誰に頼むか」を考えることは、「誰に自分の最後を託すか」を考えることかもしれません。
伯母との話し合いを続けながら、私はそのことを繰り返し実感しています。どんなに良い契約書があっても、本人が「何を望むか」を決めなければ、契約書は動きません。専門家に任せられるのは「実行」であって「決断」ではないのです。その境界線を理解した上で、信頼できる専門家を選んでいただければと思います。
身近な人の孤独死がきっかけのひとつになりました。その方の相続手続きについては、別途くわしく書く予定です。法律を知っていれば守れるものがある——そのことを、あの経験からもう一度伝えたいと思っています。

「法律を知らないと損をする」という言葉は、脅しではなく事実かもしれません。知識は武器になります。難しく考える必要はありません——今日この記事を読んでくださったことが、すでに一歩目になっているはずです。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。死後事務委任契約・相続手続き・行政書士への依頼については、国家資格者である専門家に直接ご相談ください。法令は改正される場合があります。最新情報は日本行政書士会連合会等の公式情報をご確認ください。

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