叔父が亡くなり、相続放棄をしたものの、年金支給停止手続きと健康保険の資格喪失手続き(保険証返納)は行わなければなりません。年金というのは相続じゃないと思っていた私。担当者に言われるがままに申請を進めようとしました。
年金事務所の帰り、弁護士事務所へ出向き、弁護士さんに話したら「それはね、単純承認になるかもしれないよ。申請を一度止めたほうがいいね」と。えぇぇ?年金って相続の対象だったっけ?あれ???
同じ「未支給年金」でも、状況によっては扱いが違うとは…。微々たる金額でしたが未支給年金を使用して無縁仏になった叔父にお花やお線香代にあてたらいいな。と思っていただけなのに。本当びっくりしました。もしも弁護士さんにお話しせず進めていっていたら…。
国民年金や厚生年金などの公的年金以外の「私的年金」の中には、契約内容によって相続財産とみなされるものがあったり(企業年金や個人年金などが代表的です)とかなり複雑ですし、受け取る人によっても変わるとのこと。
私が危うく相続放棄できなくなるところだった実体験を「未支給年金手続きをする前に確認をしながら行ってほしい」という思いで書きました。
30秒まとめ
- 年金には「受給中だった人の未払い分」と「一度も申請していなかった分」とあり、相続での扱い方で違うことがあります。
- 前者(受給中の未払い分=未支給年金)は、一般に遺族固有の権利とされ、相続放棄に影響しないと説明されます。ただし個別の事情で変わります。
- 私の叔父は「一度も申請していなかった」うえ、相続に別の事情も重なったケース。弁護士に「この状況で年金に動くと単純承認(=相続放棄ができなくなる)になりうる」と止められました。
- 相続放棄には「知ってから3か月」の期限もあるので年金の種類や受け取っていいものかわからない場合は、必ず専門家に確認してください。
「単純承認になる可能性があります」——弁護士の一言で驚いた私
叔父が亡くなったことを年金事務所へ届け出た際、「未支給ですよ」と言われました。年金事務所の方は未支給なので申請していただいたほうがいいですよ、と言われたので言われるがままに進めたのですが、別件での打ち合わせ時に弁護士さんにこのことを話したら「それは単純承認になる」と…?どうしよう…その時は冷や汗がでましたね。
私からすれば年金というのは相続じゃないとおもっていました。そして微々たる金額であっても無縁仏になった叔父にお花やお線香代ぐらいは充てることができるかなという考えだけだったので本当に焦りました。弁護士さんには叔父の相続放棄になる前の段階の相談にも乗っていただいており、この年金申請の件も的確に教えてくださったので、単純承認にならずに収まり、本当に助かりました。
▼この叔父の相続放棄そのものの経緯は、相続放棄を迫られたあなたへ。解体費用ほか1100万円を払う前にに書いています。
そもそも「未支給年金」って何?
- 年金を受け取っていた人が亡くなると、まだ支払われていない分(未支給年金)が残ることがあります。
- 未支給年金を受け取れるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族です。受け取れる順位も決まっています(①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹⑦その他3親等内の親族/日本年金機構)。
- この未支給年金は、遺族自身の固有の権利とされ、相続税の課税対象にもなりません(国税庁)。
そのため「未支給年金を受け取っても、相続放棄には影響しない」と一般には説明されています。ただし、個別の事情で変わり得るので、最終判断は専門家へ相談をしてくださいね。
未支給年金の請求に必要な書類
※日本年金機構の案内より。必要書類は制度改正や個別の事情で変わります。手続きの前に、最新の内容を年金事務所でご確認ください。
- 亡くなった方の年金証書
- 請求する方のマイナンバー確認書類
- 身分関係が分かる書類:戸籍謄(抄)本 または 法定相続情報一覧図の写し
- 生計を同じくしていたと分かる書類:亡くなった方の住民票の除票/請求する方の世帯全員の住民票の写し(別住所のときは「生計同一関係に関する申立書」)
- 受け取る口座が分かる書類:通帳等の写し(金融機関名・支店名・口座名義人フリガナ・預金種別・口座番号が分かるページ)
▼法定相続情報一覧図は、私も何度か作成しました。作り方や失敗談は法定相続情報一覧図、作ってよかった。郵送申請の体験談と、2026年今こそ作るべき理由に書いています。
でも叔父は「一度も申請していなかった」——ここが落とし穴
- 叔父のケースは「受給中の未払い分」ではなく、「年金受給年齢になったが一度も申請していない年金」でした。
- 一般には未支給年金を受け取ること自体は「遺族の固有の権利」で「相続放棄に影響しない」とされています(最高裁 平成7年11月7日/国税庁)。受け取りそのものが単純承認になるわけではありません。
- ただ私のケースは、相続する側に「差し押さえや未払いの税金といった事情が重なって」おり(→この経緯は▼相続放棄を迫られた話に書いています)、依頼した弁護士は「その状況で年金に動くと、単純承認とみなされる可能性がある」と慎重に判断しました。
※これはあくまで私のケースでの弁護士の判断です。同じ「未支給年金」でも、あなたの事情では結論が違いますので未申請年金を受給する前に必ず専門家へ相談してください。
叔父はなぜ申請をしていなかったのか。いまだにわかりません。人生の半分以上ほぼ引きこもりだった叔父でも一時的に勤めていた時期があることを年金事務所へ伺った際に初めて知り、年金の支払年数を年金事務所の方が計算してくださったところ受給できることを知りました…。勤務先の名称を初めて見て叔父さん頑張って働いていたんだとしみじみ思いました。
この一件から企業年金もあったので確認をすると受給対象ということも知りました。これらのことを叔父が理解していたら相談をしたり自ら動いていたかもしれないな…。どうなんだろうな…。
叔父の人生は終わってしまいましたが、もしもう少し時間があったら、また会えていたのかな。とも考えましたね。年金生活でも余生を過ごしてほしかったな。と。
叔父が年金受給の届け出を出していたら変わっていたかもしれません。本当人生わかりませんね。
年金の種類が多様にありますので、年金という言葉であっても相続になるものなのか、ならないものなのか。確認をすべきだと私の経験から強く思いました。
「単純承認」とは——相続放棄が消える行動
相続には大きく3つあります:すべて受け継ぐ「単純承認」とすべて手放す「相続放棄」、条件付きの「限定承認」(裁判所)。
- 相続財産を処分(使う・受け取る・売る等)すると、単純承認をしたものとみなされることがあります(民法921条)。
- 相続放棄は「自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所へ申述します。
- 一度単純承認とみなされると、原則、相続放棄はできなくなります。だから「触る前に確認」が鉄則です。
これらについては裁判所「相続の放棄の申述」のページも参照していただければとおもいます。
慌てて取り下げるまでにやったこと
弁護士さんに「単純承認になるよ」と言われその日のうちに慌てて年金事務所へ連絡しました。
受け付けた担当者が申込みをすでに統括のほうへ送ったとのこと…。弁護士さんに指摘されたことをお話しして差し戻しをお願いしました。
その後年金事務所の担当者の方からの連絡待ちがとても長く感じました。受理されていたら担当者でも止められない。と言われていたので…。
3日後。「差し戻ししてもらいましたよ!」と担当者からの電話が。
………よかったぁぁぁ。
受理される直前だったとのことで危なかったんですね…。年金事務所からは「相続が落ち着いてから、再度申請してもいいですよ」と言われました。
家庭裁判所へ相続放棄の手続きが完了したら申請できる。ということなんですね。
いろいろと学ぶことがあるな…。役所関連の方でも確認したくらい様々なケースがあるんだな。と。
相続放棄を考えているあなたへ——未支給年金申請する前に
その当時の手帳に書いている文章をブログ投稿する前に読み返しているのですが書いたのは私なのに「よぉがんばったね…」とつぶやく私。
身近な人の死を悔やむ時間も充てられずに相続手続きに追われ、疲弊はするわ、しっかりとした判断能力をもって接しなければならないなんて…。その当時の私は私自身ががむしゃらに業務をこなして収めることが叔父への弔いじゃないか。という気持ちが強かったかもしれません。
相続という言葉がつくものは、まず「相続に関係するかも」と疑って確認するくらいの気持ちで進めないと、判断能力が落ちている時に失敗することもあるかもしれません。まさに私の体験がそうですし、弁護士さんに指摘されていなかったら叔父の資産と負債をかかえることになってしまったのですから…。
費用などの不安はあるかもしれませんが、専門職の方にお願いすることであなた自身の時間と体力を温存できる。このような考え方もありだと私は思います。
相続放棄の期限3か月。あっという間ですよ。
専門職の方を選ぶのも大変かもしれません。私の場合は、叔父の事情が事情だったので背景がこうで…とすべて話をして弁護士に「こうしたい」という明確な目標と提示はしました。そのことで、信頼関係ではないけれど、やり取りがスムーズにもなりましたし、突発的なアクシデントともいえる「単純承認じゃないか疑惑」に対応できたのかなと思います。
よくある質問
Q. 未支給年金を受け取ると相続放棄できなくなりますか?
A. 未支給年金は生計を同じくしていた遺族の固有の権利とされ、一般には相続放棄に影響しないと説明されています。ただし個別の事情で変わり得るため、専門家にご確認ください。
Q. 故人が年金を一度も申請していなかった場合はどうなりますか?
A. 「未支給年金」とは扱いが異なる可能性があります。さかのぼって請求する前に、必ず弁護士にご相談ください。
Q. 単純承認とは何ですか?
A. 亡くなった方の財産と借金をすべて受け継ぐことです。相続財産を処分すると、単純承認をしたとみなされることがあります(民法921条)。
Q. 生計を同じくしていない親族でも未支給年金を受け取れますか?
A. 受け取れません。未支給年金は「生計を同じくしていた」遺族に限られ、受け取れる順位も決まっています。
参考にした公的情報
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」(未支給年金を受け取れる遺族の範囲・順位)
- 日本年金機構「亡くなった方の未支給年金を受け取れるとき」(請求書類)
- 国税庁 質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」(未支給年金は相続財産ではない)
- 国税庁 タックスアンサー No.4123「相続税等の課税対象になる年金受給権」(企業年金・個人年金などの私的年金)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(3か月の期限・単純承認/相続放棄/限定承認)
- e-Gov法令検索「民法」(第915条・第921条ほか)
- 最高裁判所 平成7年11月7日 判決(未支給年金は遺族の固有の権利であり相続の対象ではない、とした判例)
この記事は私(アオゾラパズル)の体験にもとづく一般的な内容です。私は専門家ではありません。年金の請求が相続にどう影響するかは、受給状況やご家庭の事情によって大きく変わります。年金の手続きをする前に、必ず弁護士・司法書士など専門の窓口にご確認ください。

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